スペイン回想

2000年06月01日

スペイン回想

[投稿者:仙台インターネットマガジン編集部]




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No.2








自分のことが一番良く解らないものだ。


自分がいかに幸せかも、


自分がいかに不幸かも、


ここからは良く解らない。

  





数年前に、長年憧れていたスペインのアルハンブラ宮殿へ、、一人旅をした後に「現代ギター」誌に掲載したその回想録を、今回は掲載したいと思う。

 

  スペインの地図
 後から
聞いた話だが、昨年の夏、スペインは記録的な暑さだったらしい。マドリッ
の古いホテルに着くと、床が大理石で出来ており、少しはひんやりするがクーラー
はない。テレビをつければ、セビリヤで熱射病のため、お年寄りが何人も亡くなった
という。部屋の温度計は、夜になっても36℃を指している。やむなく床の上にタオ
ルを敷いて眠る。先が思い遣られる。
 

 タルゴでマドリッドを離れ、グラナダへ向かう。マドリッドでは、レコンキスタ以
前の古いスペインにあまり出会うことが出来ず、グラナダに期待がかかった。外の風
景は、砂漠が続く。荒涼としている。オリーブも育たない土地。本当にこの先に、憧
れのアルハンブラがあるのだろうか....。リナレスバエサに入る頃から、汽車は山岳
鉄道の様相を呈してくる。何度も目につく谷間には、昔は川であったという痕跡しか
残っていない。途中、珍しく夕立が降り、乾いた台地はしばし潤ったかに見えたが、
その後、まるでビデオの早送りか何かを見ているように、水が次々に消えてゆく。外
は、何事もなかったように、風と砂埃の丘が続く。夜のグラナダは少しひんやりとし
ている。そうか、ここは、いわば高であったのだ。再会を喜び、抱擁しあう人々の
間をぬけて、ホテルに入る。よかった、クーラーがある。
 

  アーチ状の門の写真
 朝、ヌエバ広場まで歩く。途中、タイルモザイクで飾られたアーチ状の門を持った
家々や、教会が幾つも目に入る。夢中でシャッターを切る。もちろん、今では接収さ
れ、全体としてはカソリックへと改装されてはいるが、やはり、本物は美しい。イザ
ベル女帝の眠る聖堂の脇を通り、広場に出ると人集りがしている。アルハンブラへの
バスの切符を買っているのだ。上まで歩くことに決め、ゴメレス坂を登りはじめる。
角が取れ、丸くなって黒く光る石畳。ヌエバ広場までの商店街とは全く違った雰囲気
が漂う。道も狭く、車の行き違いもままならない。一体、何人の人間がこの坂を登っ
たのだろうか.....。ゴメレス坂の写真







革製品の土産物を売る店、安物のギターショップ、寄せ木モザ
イクの小物を作る工房。中で仕事をしている人々も、下の人達とはどこか違っている
ように見える。最初の門にさしかかると、何処からともなく、肥った、浅黒い女性た
ちが出てきて、杉の葉のような物を売り付けようとする。警官に制止されているが、
全然へこたれない。

  最初の門の写真




  



 門をくぐると、突然、目の前に森が広がる。また、水の音も聞こ
えてくる。シェラネバダからの水を引いて、森のあちこちに流れ出るようにしてある
のだろうか....。ベンチに座って、水を飲んでいると、ふとあたりが涼しくなってい
るのに気がつく。下の商店街の喧騒が嘘のようだ。木陰に涼を求める様々な人種の人
々の顔を眺めながら、入場券を買う長い列に並ぶ。太陽は真上にあり、汗は滝のよう
に流れるが、
建物の中は涼しい。宮殿の内部に入った後は、出口でふと我にかえるま
で、何処をどう通ってきたのか、ほとんど思い出すことが出来ない。ただ、人の波に
押されるようにして、目も眩むような装飾の施されたいくつもの部屋を次々に通りぬ
けてきた。ヘネラリフェー=アルハンブラの離宮


 冷静になって、その彫刻の手の込みよう、計算し尽くされた部屋の配置、
また光と影の巧妙な使いように目を向け、落ち着いてそれらをカメラに収めることが
出来たのは、三度目に足を運んだ時だった。ここが、破壊されずに、永く保存されて
きたのもうなずける気がする。「戦いのための要塞」としての質素な外観とはうらはらの、内部の豪華さは、見る者の思考を一瞬凍らせるだけの緊張と陶酔の気を放って
いた。グラナダを再び取り戻した人々は、いったいどんな目でこれを見ただろうか?

それにしても、この中にいると言い様のない寂しさを感じるのは何故だろう....。滅
びることが約束されながらも、これを建て、ここを去っていった王の悲しみだろうか
....。

  宮殿の写真
  夕方の低くなった太陽の光を受けて、アルハンブラの城壁はその名のとおり真
っ赤に輝いていた。それは、紛れもなくこの場所の、この乾いた赤い土を使って建て
た証しだった。その赤い土は、完成までの百数十年の間に、戦によって流された多く
の人々の血の色にも見えた。
 


 乾いた台地と、灼熱の光と影に、何故か後ろ髪を引かれる思いで機上の人となった
。この数週間接した事々を反芻するように、手持ちの資料を眺めるが、新たに疑問
は湧くばかりだ。そんな釈然としない想いのまま、肌にまとわりつくような湿気と、
車からのむせかるような熱風の吹く、

いつもの見慣れたこの街に降り立ってしまった


 



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投稿者 仙台インターネットマガジン編集部 : 2000年06月01日 03:26
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