美しい音

2000年12月15日

美しい音

[投稿者:仙台インターネットマガジン編集部]


 楽器には、それぞれに特有の音色というものが備わっている。その楽器が起こった当時から、その形態をほとんど変えていないような楽器でも、機械と言えるほどの進化を遂げた楽器でも、それぞれに聞けば「あぁ、あの楽器だ」と解る音色を持っている。音色は、その楽器の魅力を語るうえでの大きな要素の一つになっていることが多い。


 どのような音色があるかということは、楽器を演奏するうえで非常に重要なことと言える。すなはち、実は、一つの楽器には、一種類の音色だけが備わっているという訳ではないのである。


 例えば、日本古来の尺八を考えていただきたい。首振り3年と言われるように、つーんとながくのびた音の後に、民謡の「こぶし」のように音が揺れるのは尺八の大きな魅了である。しかし、あるときは、息のスピードを速くしてかすれたような、風の音のような音を出すこともあるし、またあるときは、口の中で舌そのものを震わせ、連続する音を表現することも出来る。


 音色を変えにくいと言われるピアノでさえも、鍵盤の手前側を押したり、黒鍵に近い側を押したりして、弦にハンマーがあたる速度や重さを調整することで音色を変化させるという。また、ピアノにはペダルというものが付いており、いったん出た音を止めずに、後から出る音とだぶらせて、全部の音が響く状態を作り、拡がりのあるゆったりとした表現をも可能にしている。


 我らがクラシックギターはどうだろうか?音色の多彩さでは恐らく右に出るものはないだろう。「ギターは小さなオーケストラ」とはヨーロッパで言われるようになった言葉であるが、その意味するところは、オーケストラで次々に色々な楽器が全く違う音を鳴らすように、一台のギターからこんなにも違う音色が出てくる、ということであり、クラシックギターの特質を語るうえで重要なたとえの一つとなっている。


 古くからのギターファンの中には、かの巨匠アンドレス=セゴビアの非常に美しい音に酔いしれ、「セゴビアトーン」という言葉まで作ってしまうほど、一音の美しさに大いに魅力を感じ、自分の演奏に活路を見いだしてきた人々も多かった。また、一方では、現代の若き巨匠と言われるマヌエル=バルエコは、ムラのない均質な音色で、常に乱れのない演奏を目指し、早い指さばきにも耐えうる安定したテクニックを完成させていると言われている。しかしながら、このような一種類の特徴ではその人の演奏を語ることは出来ないのである。


 詳細に彼らの演奏に聴き入ってみると、セゴビアは、太く甘くビロードの様に美しいあのセゴビアトーンとは正反対の、細く硬くチリチリとした音色も常多用しているし、セゴビアトーンからするとむしろ「汚い」と言えるような音も意図して使っている。一方のバルエコも、実際に会ってそのテクニックを目の当たりにすると、音楽を均一にするために右手の弾き方を細かく調整し、多くの音色を使い分けていることがわかる。


 昔からのギター愛好者達は「美音」に、現代の若きギタリスト達は「華麗なるテクニック」にどうしても目が行きがちであるが、前述したように、音楽を構成する要素の一つである音色は、一種類ではないのである。ましてや、楽器が持っている本来の魅力を引き出すと考えると、その音色の可能性は無限にあると言える。


 その楽器に深く精通した演奏者達は、客席からはなかなか見えにくいこういった創意工夫を凝らしながら、日々練習に励んでいるのである。


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投稿者 仙台インターネットマガジン編集部 : 2000年12月15日 14:23
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コメント

かつて、ピアノが現在の形になるまでの発展期は鋼鉄製のフレームの開発や鍵盤の数の変遷など、いろいろなピアノが生まれたと聞きます。現在は「完成された」楽器だとされているのか、大きな機構の変更が生まれていないように思います。ギターも、木材以外で作ったら違う楽器になってしまうかも知れないし、音自体が劇的に変化するのは難しいのでしょうね。楽器そのもの以外、弾き方で音の違いを出すのがプロの範疇なのであれば、もう一つ新たな分野があると思います。楽器を抱えている人間の体も共鳴体ではないか?と思うのですよ。共鳴しやすい体型・体脂肪ってありえないですかね?
無いか…。

投稿者 Fanfare : 2007年07月24日 16:32
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