マリリン・マンソン VS ニーチェ 第二戦 2003.6.X 初出

2003年06月01日

マリリン・マンソン VS ニーチェ 第二戦 2003.6.X 初出

[投稿者:大場理史]

というわけで、マリリン・マンソンが
ニーチェを読んでいた事を僕は発見したのです。
ファンの中では常識かもしれませんが。

ニーチェの代表作、ツァラトゥストラはかく語りき、は
名著で、僕も読んだ事があります。

マリリン・マンソンと同じく
キリスト教世界にあって、神は死んだ、と叫んだニーチェ。

しかし、ニーチェの代表作、ツァラトゥストラはかく語りき、を
注意深く読んでいくと、ニーチェは
イエス・キリストその人を批判しているのではなく
イエス後の教会のあり方、社会のあり方
文明のあり方、を批判しているのだと分かります。

キリスト教文明というのは、近代科学や
クラシック音楽などを生み出して
世界に貢献してきましたが
隣人愛や天上の救いなどの概念が
どうしても偽善的な文化を形成してしまう
ようです。

好色、貪欲、金銭欲といった
人間の自然な欲求を否定し
天の国に至上の価値を置く。
その事自体は「♂♀ 生・性・聖」の
エッセイでも書きましたが
地上で傷ついた人々に安らぎを与える、という
宗教本来の形ですから仕方のない事です。
ですが、現在のアメリカ政府のように
他国でキリスト教的価値観から見て
非人道的な事が行われていたら
出かけていって開放、教化してあげなければ
ならない、という清教徒的というか
子供じみた正義感のある文化、文明を
築きがちです。
それで世界中が迷惑しているのにやめない。

そういったキリスト教文化が持つ偽善性を
鋭敏な感性を持つニーチェは感じ取り
ツァラトゥストラはかく語りき、の中で
天国を否定し、地上の快楽を肯定し
超人になれ、と叫んだように思います。

ニーチェ自身は最終的に、永劫回帰、という
あらゆる善悪も、時空も
キリスト教という宗教すらも超えた概念を提出し
発狂してしまい、十年以上ベットの上で
のた打ち回って死んでしまいました。
すさまじい。

私はダイナマイトである-。
とも、生前ニーチェは語っていて
同時代の人は理解できなかったようですが
確かにニーチェはダイナマイトで
盲目的なキリスト教の支配から脱した
ヨーロッパは、その後
急激な近代化を迎え、戦争の世紀に突入し
ナチスを生み出してしまいます。
ピカソの絵で有名なゲルニカという町で
人類史上初めて一般市民への無差別爆撃が
行われましたが、僕はそこにもニーチェの
影を感じます。
歴史に、たら、れば、はないとよく言われますが
ニーチェがいなければ広島、長崎に原爆が
落とされる事もなかったのかもしれません。

アメリカの学校で起こった殺人事件が
マリリン・マンソンのアルバムのせいにされた
というのも同じ構図のような気がします。
マリリン・マンソンも現代アメリカの
ダイナマイトなのでしょう。
自分達の持つ一番嫌な部分を見せられると
社会は非難します。
それは普段は蓋をしている自分の欲求でも
あるからです。

でもそれはニーチェと同様、吹き出すべくして
吹き出したその文明の持つ毒であって
マリリン・マンソン自体を非難しても
仕方がないような気がします。
ちょうどサカキバラ事件の後
日本中で少年犯罪が頻発したようにです。
誤解されると困りますが
それは、サカキバラ事件を起こした少年が悪くない、という
事ではありません。彼はその毒を芸術という形で
提出すべきだったのです。

閑話休題。
マリリン・マンソンにしてもニーチェにしても
共通するメッセージは
傷ついたからといって、天国での救いばかり
考えて祈ってばかりいるな!
現世でどんな貧乏くじを引いても
無理やり幸せになれ!
地上に生きろ!
地上の悦楽を肯定しろ!
超人になれ!
というもののように思います。
ですが、そういうメッセージが世界に溢れると
どうしても地上は争いの絶えない場所に
なってしまいます。
もしかしたらイエス・キリストは
人類の特質がそういうものだ、と知っていて
2000年以上も続く大嘘をかましたのかな、と
思うと、逆にイエス・キリストの
凄さもわかります。

マリリン・マンソンもニーチェも
ひどい育ちだったらしく
どうせ神なんかいねえんだろ? と
思う瞬間が何度もあったのだと思います。
でも不思議な事に両者とも
イエス・キリストその人は批判していません。
イエス以後の社会、教会、文明を批判しているのです。

感性の鋭いマリリン・マンソンの
ボーカル、ブライアン・ワーナー氏は
ニーチェ同様、ひどい育ちの中で
傷ついた人間は天国という概念にすがって
一生を終えるしかないのか?
TVではおかしな宗教家が出演し
ワイドショー的な人生相談を行って金を儲けて
いやがる!
ラジオから流れてくるロックミュージックも
売れ線バンドばかりだ!
ROCK IS DEAD !
GOD IS DEAD !
GOD IN THE TV ?
ハレルヤ・マザーファッカー !!!
と、怒りと破壊衝動を高めていったのだと思います。
そして日本の宮城県仙台市青葉区北山に住む
小説家の卵にまで衝撃を与え、エッセイを一本書かせて
しまう程の、マリリン・マンソンの音、を作った。

うーん、これは本物だぜ、と僕は思った。
ピュアで鋭敏な感性が社会の矛盾を暴き
それが表現として噴出してくる。
とても文学的な音だ。

マリリン・マンソンというバンドの持つ
破壊性というのは、実はとてもピュアな
初期衝動から出発していたのだ。

マリリン・マンソンもニーチェも
本物のクリスチャンだから
現在の社会、教会、文明が
許せない……。

というわけで
マリリン・マンソン VS ニーチェ は
引き分け。

ちなみに今日はマリリン・マンソンと
hideが友達だったというのも
なんとなく分かりました。
ZILCHのhideです。
今なら書いてもいいように思うのですが
hideはファンに内緒で
慈善団体に寄付していたらしい、との事です。
友達から聞いた話なので噂かもしれませんが
(間違ってたらゴメンナサイ)
でも格好悪いからファンに隠してた、と
いうところに、僕は精神のダンディズムを感じました。

どんなに破壊的な表現を行っていても
表現者の根底にあるのはいつも
とてもピュアで傷つきやすい感性の
ような気がします。

-マリリン・マンソン VS ニーチェ(完)-


ツァラトゥストラ〈1〉 (中公クラシックス)

ツァストゥストラ〈2〉 (中公クラシックス)

マリリンマンソンの言葉

神歌





仙台、宮城、東北のブログをもっと読みたい人は人気blogランキング

今月の人気記事を見る。

blank_space
投稿者 大場理史 : 2003年06月01日 00:00
RSSで仙台インターネットマガジン最新の記事を購読
最新の記事がアップロードされると、ブラウザに自動的にお知らせします。
登録をする (XML)
RSS対応のブラウザ
Windows: FirefoxIE7
Mac: Firefox, Safari, OmniWeb


仙台インターネットラジオ局

仙台発のポッドキャストをどうぞ。
iTunesに登録
iTunesにアイコンをドロップ&ドラッグしてください。
iTunesを持っていない方はこちらからダウンロード (無料)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL : http://www.im-sendai.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/73

このリストは、次のエントリーを参照しています: マリリン・マンソン VS ニーチェ 第二戦 2003.6.X 初出:

Title: マリリン・マンソン VS ニーチェ 第一戦 2003.6.X 初出
Excerpt: いきなり ROCK IS DEAD ! GOD IS DEAD ! GOD IN...[続きを読む]
From: 仙台インターネットマガジン ★仙台のフリーネット雑誌
Date: 2005.07.13
Title: マリリン・マンソン VS ニーチェ 第一戦 2003.6.X 初出
Excerpt: いきなり ROCK IS DEAD ! GOD IS DEAD ! GOD IN...[続きを読む]
From: 仙台インターネットマガジン ★仙台のフリーネット雑誌
Date: 2005.07.16
Title: ボウリング・フォー・コロンバイン
Excerpt: この前、マイケルムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」をTVでやっていたので見た。 アメリカの銃社会とそれが引き起こす問題についての分析をして、何かを[続きを読む]
From: 占い師の囁き
Date: 2005.07.26
Title: 永遠回帰・運命愛・ニーチェ
Excerpt: sさんの記事Eternal Sunshine of the Spotless Mindで、「永遠回帰」についてチョロッと引用されていたので、それに触発されて、私...[続きを読む]
From: ◇◆Essayという試み◆◇
Date: 2005.07.26
Title: "nihilism"への疑問符/「意味」について
Excerpt: "nihilism"というものがある。 「ニヒリズム」という英語(という発音の英語)はなく、これは日本語である。 「ニヒリズム」は、「虚無主義」と言...[続きを読む]
From: ◇◆Essayという試み◆◇
Date: 2005.07.26
Title: 「ツァラ」
Excerpt: 「ツァラ」によると、人間は三段階(レベル)の変化によって成長していく。 〓ラクダ   ↓ 〓ライオン(獅子)   ↓ 〓子供(小児) ...[続きを読む]
From: ◇◆Essayという試み◆◇
Date: 2005.07.26
Title: ゲルニカII
Excerpt: 拙記事「ゲルニカ」に多くのTBとコメントをいただきましてありがとうございます、ヴ[続きを読む]
From: アマデウス
Date: 2005.07.27
Title: Smells Like Children/ Marilyn Manson マリリン・マンソン
Excerpt: Smells Like Children/ Marilyn Manson マリリン・マンソン Smells Like Children [EXPL...[続きを読む]
From: 洋楽サイトT.C.BLOG
Date: 2005.07.27
Title: 生死に接する機会薄く
Excerpt: Todays Topic 県教委が24日に発表した県内小中学生の「生と死」のイメージに関するアンケート結果では、子どもたちが死を身近な問題として...[続きを読む]
From: あおい空の下で
Date: 2005.07.27
Title: うんちく vol.1 ピカソ
Excerpt: ゲルニカ・泣く女などの作品で知られる画家ピカソのフルネームはパブロ・ピカソではあ[続きを読む]
From: 電脳秘書執務日誌
Date: 2005.07.27
Title: 『キリスト教は邪教です!(現代語訳アンチクリスト)』 ニーチェ(著) 適菜収(訳) (講談社+α文庫)
Excerpt:  昨日のトンデモ本もすごかったけれど、こちらはもっともっとすごかった。そりゃあ、[続きを読む]
From: 不二草紙 本日のおススメ
Date: 2005.07.28
Title: ■ダウンフォール The Downfall ヒトラー最期の12日間
Excerpt: ■ダウンフォール The Downfall :Hitler and the End of the Third Reich (ヒトラーと第三帝国の終焉) ●...[続きを読む]
From: ツボヤキ日記★TSUBOYAKI DIARY
Date: 2005.08.04
blank_space
このカテゴリの全記事
blank_space