「芸能界志望の飛べない人達」

2004年12月02日

「芸能界志望の飛べない人達」

「芸能界志望の飛べない人達」

 森です。劇団CUEの代表をしております。今回ご縁あってこの仙台インターネットマガジンの連載をさせていただくこととなりました。1961年生まれ双子座の人間です。かれこれ20年近く各地で演劇活動をしておりますが、現在は仙台で高校教師をしながら、劇団の代表をして暮らしています。高校演劇にも相当深く関わっていた時期がありますが、今は劇団一本に絞って演劇活動をしています。この連載を通して、一人でも多くの方と出会い、出会ったみなさんや、私の日常を、よりエキサイティングに、より意味のあるものにできればとてもうれしいことです。

 さて、連載の第一回目です。

 来年から「沖縄アクターズインターナショナル」の仙台校が開校するということで、高校生の中でもずいぶんこれが話題になっています。ひそかに志をもっている子も、この情報に注目しているようです。おりしも「ホリプロタレントスカウトキャラバン」では、仙台の中学三年生、西舘沙央理さんがファイナルステージの6人まで残るという快挙を成し遂げており、仙台もひそかに、しかし、確実に「芸能ブーム」が広がっているという感があります。

 実は私は教師になるか、芸能プロに就職するか、悩んでいたところで教員試験に合格した人間なので、いまだに芸能界の情報にはすぐに飛びつく癖があります。それに加えて芸能界周辺には友人もチラホラといるので、「沖縄アクターズ」が来るとなれば、やはりいろいろと感心を持ってしまうわけです。

 実は仙台にも結構沢山の養成所があります。中央の養成所の分校の形で開設しているところも含めると、10や20の数になるでしょう。かつて私はこういう養成所に入る若者達をなんとか劇団で面倒を見られないものかと、あれこれ動いたことがあります。高いレッスン料を払ってトレー二ングをすることも決して悪い事とは言えないのですが、何度が「芸能オーディション」の選考に立ちあって、私が感じたことは、養成所で身に着けた技能が必ずしも選考の決め手にはなっていないということです。むしろ、可能性を感じさせる前向きさのある子の評価がとても高い傾向があるように思います。 だとすれば、ステージに実際に上がり、お客さんの前で何かを演じる経験を積んで、前向きな姿勢と自信、さらにはお客さんにPRする姿勢をしっかりと身に着けることも無駄ではないように思うのです。

 無論、劇団出身というと「妙な演技の癖がついて大袈裟でクサい」という不評を買ってしまうことが、オーディションにはあることも承知しております。ただ、私の主宰する劇団CUEでは、どちらかというと「自己プロデュース」といって、その場で求められているものが何であるのか、役者がそれを理解して演技するというシステムを取っています。役者をがっちりと指定どおりに演じさせる方法は特定の場面をのぞけばほとんど取られていませんので、融通のきかないような悪い癖はつきにくいスタイルになっています。演劇というよりも、ステージ活動の全般の基礎をここで体験することが劇団CUEの大きな目的なので、あえてこういうシステムを取って居ますが、 実際にこういう方法を取ったほうが演技力が格段に向上することが多いと思っています。とこれは手前味噌ですが、実際に劇団CUEには、演劇、芸能界希望者をはじめキックボクサーや野球のピッチャー、バンドマンなどが広く集まり、それぞれのバックボーンを活かした独特の舞台を作っています。

 さて、前置きが長くなりましたが、そういったわけで、市内の養成所に通う若者や、養成所に行きたがっている若者とコンタクトを取り始めてみました。しかし、不幸にして私が会った若者は皆例外なく????と感じざるをえない若者でした。メールを受け取る限りではいろいろな事を書いてもいるし、結構専門的なことを質問してきたりしているので、これはと思い期待を胸にして会ってみると、予想に反してエネルギーの感じられない子がとても多いのです。

 「いや、それは感じられないおまえが悪い 」と思われた方もいるでしょうけれど、彼女らは「タレント」になろうとしている人達なのです。ほんのわずかな時間であっても、それで自分の夢や希望を伝えられない人に、オーディションを通り、沢山の人の支持を集めることができるでしょうか。こういう世界では「個性」というものは、本人が意図するしないは別にしても「相手に伝わる」ものでなければ意味がないでしょう。でなければまったく「ないものと同じ」にされてオシマイです。「わずか5分のオーディション面接で私の個性がわかるのでしょうか?」という質問をよく受けるのですが、正確に言えば「五分で自分を伝えきれない人はプロにはなれない」ということだと思います。

 というわけで、私は劇団に「芸能界志望」の子を沢山集めて、活気のある集団を作ろうと思っていたのですけれど、むしろとても暗い集団になってしまいかねない。結局、私から積極的にコンタクトを取ることはやめることにしました。

 さて、芸能界を目指しているのに、あまりエネルギーが感じられないという問題は一体どういうことなのでしょうか?最初に考えつくのは「やはりやる気のある奴は東京へ行っているだろうなあ」ということ。ただし、ホリプロあたりが血眼になって全国にタレントスカウトキャラバンを展開しているところをみても(そして、今年のグランプリは大阪、審査員特別賞は広島と栃木の子だということをみても)その考えはあまりアテになりません。

 そうすると次に問題になるのは、養成所の姿勢でしょうか。最近の養成所の多くは「生徒募集」といわずに、なんでもかんでも「オーディション」という呼び方をします。そして、応募者のほとんどを「合格」にしてしまう。要するにオーディションを通ったという事実が強力な引きになって、本人はその養成所に入ってしまうわけです。精神的には「自分の才能を認めてくれたのはこの養成所だ、ここなら、あるいは・・・」というノリになってしまいます。そして、ステージママを夢見るお母さん達も、 それにあわせて走りだしてしまえば、もう養成所としては完璧な生徒募集になるでしょう。最近では「準合格」などといって、特定のレッスンをうければもう一度オーディションにチャレンジできる・・・・・なんて歌い文句のついているものもあ るようですが、ここまでくればちょっと悪質だよなあと思わされます。東京で名の通った養成所のレッスン料は1時間1500円〜2000円が相場なのですが、こういう「準合格」のレッスンはその数倍になることがありますから。

 かつて私の教え子も、ある養成所の「オーディション」に「準合格」して私のところに相談に来た事があります。彼の受け取った文書には「あなたはめでたく「準合格」となりました。半年後の「本選」で合格できればデビュー確実。そのために半年間の入寮レッスンを受ける事。レッスン料と寮費込みで78万円を指定の期日までに振り込むこと」ということが書いてありました。これはまったくひどい話しです。これなら最初からオーディションなどと言わず、「全寮制養成所。諸経費78万円。入所者募集」といってくれた方がずっとずっとフェアではありませんか。

 まあ養成所としても、すべてをプロにするなどということは無理な話しでしょうし、いつまでも在籍して学費を払い込んでくれる人が沢山いたほうがいいでしょう。こういう養成所をなくそうとしても、それは無理というものかもしれません。

 そうすると、やはり「養成所にいけばデビューできる」という安易な思い込みをもって入る若い世代の気持ちの問題でしょうか。確かにそういう面はあると思います。しかし、それも何か違うような気がする。どんな所にいようが「デビューしたい」という気持ちを本当に持っているなら、それはそれで素晴らしいことなのです。

 私が会った若者達の中には、ひそかに自分の所属している養成所に不信感を持っている人も少なくありませんでした。それゆえ「養成所もいいが、信頼すべきオーディションを受けなさい」と勧めたことが何度もあります。しかし、こういうと彼女らは例外なくしり込みをはじめるのです。それはまるで自分がそんなオーディションを通過できっこないことを知りぬいているかのようです。もしかすると、彼女らは「デビュー」など本当はしたくないのではないでしょうか?このまま夢を追いつづけながら生きていけばそれで満足だと思っているのではないでしょうか。私にはそんな疑問が湧いてくるのです。


 そして、実は「劇団」という団体も、こういう若者の集まる場になりやすい体質をまちがいなく持っています。自分達だけの世界に篭りやすい分、養成所以上に危険な側面があると言わざるをえないでしょう。さらに劇団は芸術的な色合いのある集団と理解されやすく、行政の保護を受けることすらあるわけですから、それは「温床」になることすらある。一度変な形ではまってしまうと、とてもタチの悪い集団になりやすい。それが劇団なのかもしれません。

 夢は現実に直面して初めて輝きを増すものだとすれば、劇団が劇団員に対してなすべき仕事は、その現実に直面する機会を数多く作ってやること意外にないのかもしれないなあと思います。 劇団CUEでは役者をCMやバレエ公演、テレビ、ラジオ、バンドとのタイアップなど、様々なステージに若い役者を派遣しています。時に番組企画や制作、編集の経験を積ませながら、連中の現実への回路を確保しようとしていますが、道はまだまだ険しいです。いや、最後は再び手前味噌でしたが、今回はここまでとさせていただきます。




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投稿者 im-sendai : 2004年12月02日 11:43
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