卵のなかみ150回記念・2003年死語辞典(7) 2003.12.X 初出

2005年01月31日

卵のなかみ150回記念・2003年死語辞典(7) 2003.12.X 初出

・受験戦争、学歴社会

ソニーは学歴を問わない、というニュースが
かつて話題になっていましたが
最近のニュースでは、定期昇給や
年功序列型の給与体系なども止めて
完全実力制に移行すると発表されていました。
本当にもう、ビジネスオリンピック、という感じです。
いったいこのハイパー資本主義化は
どこまで行ってしまうのでしょう。

それはともかく
こういった動きは他の大手企業にも波及して
いくと考えられるので
もう、どこそこの有名大学を出た、とか
どこそこの有名会社にいたことがある、というのは
完全に時代遅れのものになってしまうのでしょう。

大学も会社も入るまでが勝負
入ってしまえば後は、俺は~会社の社員だ、
俺は~大卒だ、おお凄い、という時代は
完全に過去のものとなって
しまいそうです。
これは大変な事です。

僕より上の世代の人達は
ほとんどが出身大学の偏差値の高さや
所属している会社の評判で
その人の実力を判断する傾向があります。

以前にも書きましたが
僕は中学・高校とも偏差値25だったので
僕の能力は、どうせ偏差値25くらいだ、と
思って小さくなっていたことがありました。
でも社会に出てみてから
京大法学部卒とか第一勧銀にいたとか
いう人と会って話をしてみて分かったのは
そんなに考えている事は変わらないのだな、と
いう事でした。

受験戦争や学歴社会の弊害によって
僕のように要らぬ劣等感を抱いてしまった人は
結構多いと思います。
最近思うのは、受験戦争・学歴社会というのは
中国の高級官僚登用制度、科挙、を模したものでは
ないかという事です。
科挙制度、つまり、科目による選挙です。
高級官僚は公的な仕事なので
コネではなく選挙で選ぶ必要があったのでしょう。

霞ヶ関の高級官僚が支配するこの国が
その、科挙制度、を思わせる教育制度を組み立てたのは
偶然ではないと思います。
科挙、には、出身・身分に関係なく
優秀な人材を、科目による選挙、で
採用できるという利点があります。
でも同時に、高級官僚支配を正当化する
論理にもなるのではないかと思うのです。
つまり、お前らが遊んでいる時に
俺たちは受験勉強してたんだ、だから
高級官僚が天下りしたり
接待を受けたりするのは当然だろう、という
ことになるからです。
確かにそう言われると何も言えない。
そして偏差値が低かった人はいらぬ
劣等感を植え付けられる。
高級官僚の支配は磐石となるわけです。

実際僕が紅顔の美少年だった頃
つまり僕が中学生・高校生だった頃は
大卒と高卒では月給が5万円違う、なんて
親や教師に脅されていました。
社会が敷いたレール、にまだ幻想があったので
受験、は、一生を決めるものだ、とも思い込まされて
いました。

昔は志望校に落ちて自殺する人もいました、というのは
ア・ルース・ボーイのエッセイにも書いた通りです。
こうして考えてくると、ア・ルース・ボーイの作者
である佐伯一麦先生が三島由紀夫賞を受賞したのも
よく分かります。
ドロップアウトした高校生、という私小説の
形をとりながら、科挙制度に対するカウンターにも
なっているわけです。
20世紀後半の日本社会における
受験戦争の矛盾、という大説が
ア・ルース・ボーイ、という小説を生み出しているわけです。

僕が文学のいろはを仕込まれた
二日町の文芸喫茶のマスターは
私小説は普遍化することで、私、が消える、と
言っていましたが、このことかもしれないな、と
今思いました。
つまり、一人称で、私の話、を書いていながらも
その背後の大きな歴史の流れや
他の人々へも通じる、普遍性、が含まれていれば
私小説から、私、が消えて、普遍的な小説、になるわけです。
私小説は普遍化することで、私、が消える。

少々話が逸れましたが
受験戦争に代表される、科挙的、ペーパーテスト的
システムは、フラクタクルにこの社会に
偏在しています。
昇進でも何でも、ペーパーテスト、になりがちです。
そしてそれが給料にも反映されてしまいます。
そうなると、受験テクニックの上手い人だけが
上に行ける。

でも、ソニーは学歴を問わない、というところから
一歩踏み出して、定期昇給も年功序列も止める、と
宣言してしまいました。
誤解されると困りますが、僕はそれが
良いとか悪いとか言っているわけではありません。
ただこれは大変な事だなと思うわけです。

受験戦争・学歴社会、は、あと何年かで
完全に死語となるでしょう。

-2003年死語辞典(8)へ続く-
http://www.im-sendai.jp/archives/2005/01/15020038200312.html

ア・ルース・ボーイ 佐伯一麦 著







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投稿者 im-sendai : 2005年01月31日 00:11
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