土地の持つ力(3) エルサレム 2003.11.X 初出

2005年01月30日

土地の持つ力(3) エルサレム 2003.11.X 初出

世界中で最も、土地の持つ力、がある場所と言えば
これは間違いなく、エルサレム、でしょう。
エルサレム、は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、三つの宗教の聖地となっています。
つまり、ユダヤ教の神殿跡、キリスト教の聖墳墓教会
イスラム教のモスク、が立ち並ぶという
凄い土地です。この土地を巡った血なまぐさい対立の
ニュースを僕達は毎日のように聞かされます。

長い間、というか2000年間、キリスト教国家でも
イスラム教国家でも差別され国土・国家を持たないまま
放浪していたユダヤ人達は、ヒトラーのユダヤ人抹殺計画あたりからこれでは駄目だ、という事で、シオニスム運動、を起こし、現在のイスラエルを建国したわけですが、このシオニスム運動の、シオン、は
エルサレムの古名だそうです(村松剛著、ユダヤ人、中公新書) 
遠い昔、ユダヤ人達は、シオン、つまり現在のエルサレムに住んでいた。だから、シオニズム運動、を起こして
現在の、イスラエル、を建国したわけです。

でも隣接するパレスチナのイスラム系住民にしたら
面白くない。2000年以上前にその土地に住んでいた
からといって国家を建設することが許されるなら
アメリカ合衆国はインディアンのものじゃないか、と
いうのがパレスチナ側の言い分だと思います。

そしてこの、エルサレム、という土地を巡った
血で血を洗う戦いのニュースを
ここ日本でも毎日のように聞かされてしまう。

近代法治国家は、政教分離(政治と宗教の分離)を
大前提として成立しているはずなのに
911以後、不安定になった世界に目を向けてみれば
政治と宗教は、相変わらず密接に結びついているのが
現状です。
イスラム世界は、コーランに基づいた、ジハード(聖戦)を呼びかけていますし、ブッシュ大統領も負けじと
聖書に基づいた、聖戦、を呼びかけています。
政教分離はいったいどこへ行ったのか、と
思ってしまいますが、それが世界の現実なのでしょう。

911以後、アメリカ(キリスト)が、イスラエル(ユダヤ)の肩を持ちすぎてるんじゃないか、とイスラム世界が言いたがっているような構図が浮き上がってきました。
この点クリントン大統領は、下半身は暴れん坊でしたが
イスラエルのラビン首相とパレスチナのアラファト議長を握手させた外交手腕は見事でした。
そしてちゃっかりホワイトハウスの前で
握手している紛争の両当事者の真ん中に立つ姿を
世界に打電し、世界の警察アメリカ合衆国、を印象づけた。見事です。
キリストがユダヤとイスラムを握手させた、ともとれます。

これがブッシュ政権になって
ネオコンサバティブ(新保守主義派)と呼ばれる人達が
政権中枢に入り込み、アメリカ合衆国を内部から壊し始めたわけですが、ネオコンを誕生させた背景には
クリントン政権時代、IT革命、金融グローバリズムの
恩恵に授かることができなかった、地方の
キリスト教を背景とした共和党保守層の存在が
あると言われています(アメリカは二大政党制で
クリントン氏は民主党、ブッシュ氏は共和党です)
つまりネオコン誕生には、宗教が隠れているわけです。
宗教色を廃した司法・立法・行政が上手く
チェック・アンド・バランス機能を働かせる事で
近代法治国家は成り立っているはずなのです。
そして生活の利害の対立は、政治家の議会行動によって
調整されるはすなのです。なのに911以後、不安定に
なってしまった世界に目を向ければそうなっていない。

アメリカの政権中枢にネオコンを送り込んだと言われる
クリントン政権下で冷や飯を食わされていた
地方のキリスト教を背景とした共和党保守の
人々にとっては、ニューヨークの金融を一手に
握るユダヤ人達の存在は、きっと面白くなかったはずです。
911の当日、ニューヨーク貿易センタービルに
ユダヤ人だけが出勤していなかったらしい、などという
デマが流れましたが、そういったユダヤ人陰謀説は
ヒトラーのユダヤ人抹殺計画への反省もあり
欧米ではタブーとなっているようです。
そういった話を聞くと、なんで欧米人は
そんなにユダヤ人を差別するのだろう、と
思ってしまいますが
日本も例外ではなくて、関東大震災の時は
在日朝鮮人達が暴動を起こすらしい、というデマが
流されたようです。
そのデマで実際犠牲になったのは日本人ではなく
在日朝鮮人の側でした。
現在マスコミは、在日朝鮮人が
北朝鮮に不正送金しているらしいぞ、などという
情報ばかり流して、国民の政府への不満を
北朝鮮や在日朝鮮人への敵意にすりかえようと
していますが、この国のマスコミは関東大震災の頃から
全く進歩していないわけです。
そして悲しい事に、そのデマに乗ってしまって
いる人が僕の回りにも結構多い。

どうしてそうなるか、というと
普段権力の側に立っている人間が、マイノリティ
少数派、を差別している、という負い目を感じているからなのだと思います。
ふだん酷い扱いをしていたな、という負い目が
あるから、それが混乱時において
自分達が復讐されるのではないか、といった
恐怖感に変わる。
国家と個人は違うし、民族と個人は違うのだから
対象を一くくりにして、憎んだり
愛したりするのは、もう止めたほうがいいのでは
ないかと思います。
それはいつか来た道です。
差別の構造は、どの国でも同じなのでしょう。
普遍的なのです。

弱い者達が夕暮れ、さらに弱い者を叩く

ブルーハーツも歌っていたように
それが差別の本質なのだと思います。
欧米でも精神的に自立できている人達は
ユダヤ人、というだけで特定の人を差別したり
しないでしょうし、日本でも精神的に自立できている人達は、在日朝鮮人、というだけで特定の人を差別したり
しないでしょう。
これから考えられる最悪の事態は
社会の敷いたレール、がなくなって
何をしたらいいか分からない、何がしたいか分からない、となってしまった人達のやり場のない怒りが
メディアの旗振りによって、在日朝鮮人への敵意に
向かっていくことのように思います。
僕は何度も書いていますが、近代国家は必要悪だと
思います。悪だけどないと困るもの。
だって僕達はもう、竪穴式住居、には住めないのだから。近代国家、朝鮮民主主義人民共和国、を憎んでも
在日朝鮮人、を憎んではいけないと思います。

で、エルサレム。
この周辺に住んでいる人達は
どんな感覚を持っているのだろう、と
思ってしまいますが、きっと日本に
住んでいる限り絶対その感覚は分からないのでしょう。
自爆テロなんて当たり前。
死体の中に爆弾を仕掛けておいて
死体を処理しにきた敵対勢力を殺す、なんてのもあり。
果ては、大人が敵地に近づくと銃撃されるから
子供達を使って攻撃させる、なんて手口もあるそうです。
そしてその子供達に敵が発砲してきたら
外国人ジャーナリストを使って写真を取らせ
奴らは子供達にまで発砲するという非人道的なことを
行っていますよ、と国際社会に訴える。
凄い場所です。エルサレム。

もう終わってる、という感じがしてしまいますが
このエルサレムを巡って争いを続けている
ユダヤ人とアラブ人というのは、
もとはセム族の流れから派生した同系統の同民族だそうです。

ヤハウェ信仰が起きてから、ユダヤ教、という概念が生まれ、イエス・キリスト以後、キリスト教、が誕生し
モハメッド以後、イスラム教、が誕生しましたが
もとは、みんなセム系の同民族であるわけです。
そしてユダヤの、ヤハウェ(エホバ)、キリストの、天なる父、イスラムの、アラー、は同じ神様だそうです。
そしてそれぞれに、エルサレム、を
聖地とし、世界を巻き込んだ大喧嘩をしている。

セム系の神様も、いい加減頭を抱えているのでは
ないだろうか。
お前らもういい加減にしろよ、と。
ここは、エルサレム、聖地なんだぞ、と。

そのエルサレム、エル・シャロームを
和訳すると、平安の都、となるそうです。
ナクヨ、ウグイス、平安京。

やはり近代法治国家において
政教分離の原則、は大切のような気がします。

エルサレムは間違いなく世界一、土地の持つ力、の
ある場所なのでしょう。

-土地の持つ力(3)エルサレム-

土地の持つ力(4)へ続く
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関連 No.8   ムエスリ
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・リンク

ユダヤ人 村松剛 著 中公新書





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投稿者 im-sendai : 2005年01月30日 00:56
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