車社会の行き着いた先で考えたこと

2005年08月01日

車社会の行き着いた先で考えたこと

[投稿者:佐藤研一朗]

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私が今住んでいるロッチェスターは車社会の行き着いた先だ。このコダックの本社がある人口20万の地方都市であるロッチェスターは、ニューヨーク州の北のはずれにあり、中心部は非常にさびれている。

しかしこのロッチェスターも、40年前までは、非常に栄えていて一時期は人口が30万人に近づいたこともあった。繁華街はひとであふれ、歩くのに苦労するくらいだったのだ。1950年代までは、このロッチェスターには路面電車が走っていて、街の端から端までこの路面電車で移動できたのだ。

しかも、驚いたことに、その上ロッチェスターには地下鉄まで走っていたのだ。アメリカで地下鉄をもった一番小さな市だったそうだ。しかし、車社会の到来とともに路面電車がクルマのじゃまだということで、廃止された。もともと赤字運行だった地下鉄は、路面電車が廃止されたため乗り継ぎができず、その利便性をうしなって、60年代には廃止されてしまったのだ。

この間、この閉鎖された地下鉄のトンネルに、懐中電灯をもって、見に行った。まるで猿の惑星にでてくる人類が滅んだ後のニューヨークの地下鉄の場面のようだった。なんと愚かなことをしたんだろう。何千億もかけていながらと思わずにはいられなかった。「懐にやさしい交通手段でないと長持ちしない。」大内教授のコメントを思い出すようではないか。毎年赤字を出している仙台の地下鉄が、こうならないと誰が言えるのか。

この後、地下鉄を廃止したロッチェスターがしたことは、道路の幅を広げ、郊外への幹線道路整備に全力をあげた。そのおかげで、幅の広い高速道路はきれいに整備され、半径2キロの市の中心部の周りをりっぱな環状線が走っている。ロッチェスター人の自慢は、高速道路にのれば、クルマで、市内どこでも15分から20分でいけること。ラッシュアワーといっても、仙台で言う渋滞というのはない。でも渋滞がない本当の理由は、道路が立派だからではなく、もう誰も中心部にいくひとがいないからだ。

ロッチェスター市が道路の整備の他に力をいれたこと、それは市の中心部に駐車場を沢山作ること。すべての人が車で中心部に乗り言えるのだから、それだけ大きい駐車場が必要だ。それで、どんどんビルをつぶして駐車場をつくった。その駐車場からオフィスまで、外にでずにいけるようにと、スカイウエーという、ビルとビルの間に通路をつくった。その結果、人はとおりを歩かなくなり、小売店はつぶれ、中心部はガラガラと音をたてるように、さびれていった。人が行かなくなったので、中心部にあった三越のような立派な百貨店は郊外のショッピングモールに移っていった。そして取り残されたように空っぽなビルだけのこった。

そうしていくうちに、基幹産業のコダックの業績不振もあり、中心部にあったオフィスもどんどんなくなっていった。オフィスもなくなり、小さな商店もなくなり、百貨店もなくなった。中心部は加速的に衰退していった。私はこのロッチェスターの中心部にすんでいる。ここには人もあまり住んでいなく、スーパーマーケットの一つもない。クルマのない私は、食料品を買いに行くためにはバスに20分もゆられなくてはならない。中心部のアーケード街なんてなく、ぶらぶらと買い物もできない。バスにのって40分、郊外のショッピングモールまでいってやっと買い物ができる。

市は何とか街を立て直そうといろいろやっているが、やることなすことうまくいかない。この間、鳴り物入りで登場したカナダ行きの高速フェリーもたった3ヶ月でつぶれてしまった。「なんて、あほな街なんだろう。」ロッチェスターの数々の失敗を見るたびに、そう、私はつぶやく。

ロッチェスターの人はたまに自嘲気味にこんなことをきいてくる。「おまえ、なんでこんなロッチェスターにきちゃったの?」と。「私もお金があればこんな所にいないんだけどね。。。」ロッチェスターは、街の中心をうしなって、自分たちの街に誇りをうしなった。そして自分自身にいつも自信なくこう問いただしている。「なんで、おれはこんな所にいるんだろう。」かと。

こうして、中心部は、この空っぽのビルと、空っぽでだだっぴろい駐車場だけがのこる街の抜け殻になった。眺めのいい私のアパートのまどから街をみおろす。この日曜日の午後ひとっこ1人もあるいてはいない。ばたんと言う音がしてそちらの方向をみると、だだっ広い駐車場で、少年がひとり、スケートボードの練習をしている。「ばたん、ばたん」と乾いた音がむなしく響き渡る。

こんな風景をながめながら、仙台の未来をかんがえ、今回の特集記事を書かせてもらった。国がついているから大丈夫とか、税金だから問題がないとかいって、自分の身の程もわきまえず、需要もない、そして巨額な建設費をかけ交通機関をつくれば、いつしか財政が破綻し、地下鉄を廃止せざる得なくなる。その時、僕らは、広い道路もなく、公共交通機関もなく、道路はいつも渋滞し、中心部は寂れ、教育費も捻出できなく、誇りを持つこともできないような仙台に住むことになるだろう。

仙台人よ。もうすこし、自分たちのことを考えてくれ。自分には関係ないとか、誰が政治家になても同じだとか、ナニをやっても変わらないとか、ふざけたことばかり言っていないで、自分でいろんなことを調べて、考えて、人にあって議論をして、自分の意見をどうどうと発言して、どうか自分に自己規制しないで、どんどん行動してほしい。

結果は結果。原稿用紙にして100ページ。言いたいことはいった。提案できることは提案した。自己規制をしないでやれば、このくらいのことが自分にできることがわかったから、いい機会だった。

これからも自己規制せず、どんどん文章をかいていくことにする。それがいくら、仙台人にいやがられてもだ。仙台には批判がないのだといことが今回よくわかった。

佐藤研一朗 20050731


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投稿者 佐藤研一朗 : 2005年08月01日 12:18
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コメント

欧米でも公共交通機関が補助無しで存続出来る所が珍しいようです。

都市交通の危機―ヨーロッパと北アメリカ (単行本)
J. プーカー (著), C. ルフェーブル (著)

によると、調査対象の33都市で、収益を上げているのは大阪だけ。回収率60%以上でも10都市だけ。

>kさん
書き込みありがとう。
最新のラジオを聴いて欲しいんですが、たぶんもうすぐピークオイルがおとづれるので、公共交通機関は大きく復権すると思いますよ。アメリカでも相当、バスや電車の利用が増えているようです。

投稿者 K : 2008年07月26日 20:10
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