日本の911

2005年10月15日

日本の911

[投稿者:佐藤研一朗]

週末、もとルームメートのクリスが友達と一緒にロッチェスターに遊びに来てくれた。わざわざ車をレンタルして、ニューヨーク市から6時間もとばしてきてくれたのだ。
せっかく、友達が遊びに来てくれたのに、かぜを引いてしまって、半分ノックダウンされて、ちょっとふらふらのまま、ロッチェスターの案内をした。アメリカにきてからというもの、緊張をしているのか、二年間、タダの一度もかぜを引いたことがなかったのに、こんな時に限って、これだ。

ほんとなら、よりすぐりのビールをみんなで楽しむはずだったのだが、全くアジがわからない。なんてこったってかんじ。

どうも、学校がいそがしい、プロジェクトが忙しい、バイトをして生活費を稼がないとやっていけないという、物理的な理由だけじゃなくて、どうも精神的にこのごろまいってしまっている。

仙台市長選挙で、地下鉄建設を推進する市長が当選したこと、それと、この間の衆議院選挙で、郵政民営化を推進する小泉首相ひきいる自民党が圧勝したこと、この二つにノックアウトされたようだ。

いままで自分はロッチェスターに比べたら、仙台ってなんていい街なんだろう、アメリカに比べたら、日本はなんていい国なんだとと思うことで、自分のアイデンティティーを保ってきたんじゃないだろうかとおもう。

自分の目の前にある現実がいくら悪くても、日本や仙台と比べて客観的でいられたのだ。自分にはいつでも帰る場所がある、そう思うからこそ、がんばれるし、ここで戦えるのだ。

こちらでがんばって世界で活躍できるくらいになって、でもいつかは仙台に帰って自分の力を発揮できるようになりたいと、ずっと思ってきた。

だから、日常、日本人ともあわず、日本語を話さなくても、自分は変な日本人かアメリカ人かわからない人間にならずにすんでいたんだろうとおもう。ただの日本人でいられたのだ。

ただ、今回の選挙の結果は、自分の国や、地元の政治家が、アメリカの悪いところに追随して、人々はそれを諸手をあげて応援しているように私にはみえた。実際には圧勝でもなかったし、反対している人も沢山いたのはたしかだ。

でも、なんだか結果を見て、自分の故郷と祖国の将来を楽観視することはできなくなってしまった。あきれたというか、幻滅したというか、気が滅入ってしまったのだ。ブッシュが選挙に勝って、アメリカからずいぶん多くの人がカナダに移住をしたようだが、そんな人々の心境も同じようなものだったのだろうか。自分の片方の足場がガラガラと音をたてて崩れていくような、そんな気分だ。

自分の心の中にある、自分が帰るべき故郷はなくなっていくのだろう。信じていた物に裏切られ、また無連帯の嵐の中に放りだされた、そんな気分だ。


アイデンティティーというのは、人にとって非常に大切な物だと思う。どんなアイデンティティーをその人が持っているかが、その人の人生の方向性を決めていくのだと思う。

2005年9月11日、日本の政治体制は音をたてて、大きく方向を転換した。くしくも、ちょうど四年前、アメリカが 2001年9月11日を境に大きくかわったのごとく。あれは私たち、日本人にとっての911だったのだ。

多くの人は、まだそれを認識していないけれど、日本の911は我々ひとりづつをこれからゆっくりと飲み込んでいくだろう。我々はいままでに、迫られたことがない選択を迫られるようになるだろう。日本に住んでいる人間でこの変化から逃げ出せる人はいない。

私は日本のマイノリティーで、この日本というシステムの一番端っこにいて、今回、一番最初に、この変化のあおりを受けたのだろう。この変化に自分のアイデンティティーの変更を迫られた。もうあなたはそのアイデンティティーはもてませんよと。自分は日本の911にやられてしまったようだ。

正直、どうしたらいいかは、まだわからない。二つだけ確かなことは、自分はまた新しいアイデンティティーを自分で作り上げなくてはいけないこと、そしていまは、目の前に積み上がっているやるべきことを、もくもくと処理して、前に進むしかないってことだ。

また、高校を卒業して、なにもわからないまま、旅を始めたころに戻ってしまったのかもしれない。きっとこれは、また新しい旅の始まりなんだろう。そうおもえば、先が全く見えなくても、きっと楽しめるさ。それもきっと楽しいさ。

帰るべき家を無くし
頼るべき親をなくてた
などてこの国はやぶれ
などてすめろぎは人になりたまいし
我々は、それでも生き残るしかない。


栄光に向かって走る
あの列車に乗っていこう
裸足のママでかけだして
あの列車に乗っていこう
土砂降りの痛みの中を
傘もささず走っていく
いやらしかも、きたならしさも
むきだしのまま走っていく
見えない自由がほしくて
見えない銃をうちまくる
ほんとうの声を聞かせておくれよ。


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投稿者 佐藤研一朗 : 2005年10月15日 23:53
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