談合はアメリカにもある。ただそれはほとんど陰謀 近未来交通機関の現在2

2006年10月24日

談合はアメリカにもある。ただそれはほとんど陰謀 近未来交通機関の現在2

[投稿者:佐藤研一朗]

誰が電気自動車を殺したのか?
のつづき


仙台インターネットマガジンの読者の皆さんこんにちは佐藤研一朗です。今日は前回に引き続いて、誰が電気自動車を殺したのか、その真相の謎に迫っていきます。

この映画は、華氏 911で有名になったマイケルムーアがはやらせたドキュメンタリーの手法を使って、この謎の裏に隠された秘密を暴いていくのだ。この手の映画はいまアメリカで非常にはやっている。大手電力会社エンロンの倒産の裏側を暴いた作品や、数年前には、いかにファーストフードが悪いものかということを、監督がみずからマックを毎日三食1ヶ月食べることによって証明しようとした「スーパーサイズ・ミー」というドキュメンタリーもあった。

近年はコンピューターグラフィックが発達して、映画監督はお金さえあれば、どんな映像も作ることができる。本物か作り物か見分けが付かないほどだ。そんななかで、こういう社会派のドキュメンタリーがはやっているのは興味深いことだ。低予算で作れるため大当たりしなくても採算がとれるし、やはり現実のような空想の世界よりも、みたこともない現実の裏側を見たいという需要はいつの時代でもあるのだろう。難しそうな社会問題提起も映像になると急に説得力でてわかりやすい。この手の暴き系のドキュメンタリーは将来性があるとおもう。日本でもこの手の映画が増えればいいのに。

さて、このEV1が殺されるまでのあらすじはこうだ。カリフォルニア州のゼロ排気ガス規制(Zero-emissions vehicle Mandate)を受けて、自動車会社はことなる二つの方法で、この厳しい規制に対応しようとしたのだ。一つはEV1のような電気自動車を開発をしながら、この規制をなんとか乗り切ろうとした。

もう一方では、石油会社と手を組んで、カリフォルニア州を訴えたのだ。州政府には、自動車会社に対しどのような自動車を売るかを規制する権限はないというものだ。2000年に石油会社に近い(もしくは石油会社の利益を代表する)ジョージ・ブッシュ政権が発足し、2002年にはこの裁判に石油会社、自動車会社ともに参加をする。このような規制を作る権限は合衆国政府だけあるという理由だ。石油会社、自動車会社、そしてブッシュ政権がぐるになって、最終的にはこの規制はまったくをもって骨抜きにされてしまった。これによってGMはEV1のリースプログラムをストップし、他の自動車会社も電気自動車の開発をやめてしまった。

なるほど、内燃機関(エンジン)の自動車の効率は最悪だから、これを駆逐すると宣言していた2000年の大統領候補アル・ゴアが負けた理由もわからないでもない。こういう巨大産業を敵にまわしたからだ。

おまけ

EV1の愛好者だったトム・ハンクスがEV1について語っている。

この電気自動車の盛衰を見ていくと、アメリカ自体が、2000年に民主党のクリントン政権から、共和党のブッシュ政権に変わったことをうけ、国の環境やエネルギーなどの方針を大きく変更した事がわかる。それは、ブッシュ政権が地球温暖化防止にむけた世界的な協定である京都議定書にサインをしていないことをみても、それがよくわかる。クリントン政権はアメリカはグローバリゼーションを推し進める世界のリーダーのように振る舞っていたから、環境問題にも力を入れざる得なかった。世界もアメリカに対する憧れてや幻想があった。しかし、ブッシュ政権になり、石油会社や軍需産業とつるみ、露骨にアメリカの国益を全面に出して、中東の石油を押さえるために、戦争をしそれによって国を運営していく戦争経済に入り、アメリカに対する幻想は完全に無くなってしまったように見える。今ほどアメリカの本音がよくわかる時代はない。


石油会社はそのほかにも、電気自動車を批判した広告を新聞に載せたり、充電スタンドの設置にクレームをつけてみたりと、陰にも陽にも電気自動車の普及を阻止しようといろいろと手を尽くした。考えてもほしい、電気自動車なんてものが人気になってみんな乗り始めたら、彼らの商売はあがったりになるのだ。何たって石油を一滴も使わないで走るのだから。それこそ石油時代の終焉だ。石油会社にとって、こんなに恐ろしいことはない。どんな手を使ってでも、阻止しようとするに決まっている。何たって、自分たちの商売のために大量破壊兵器を持っていると嘘まで政府に尽かせて、他の国を攻撃してまう人達だ。これが技術の進歩、世の中の流れなんだとあきらめて、自分たちの商売をほっぽり出したりはしない。自分たちの商売の敵になるものは、どんな手を使っても倒すのだ。なるほどアメリカ的ではないか。


こんなことを言っていると、「随分世の中を斜めに見ているね。」と言われてしまいそうだ。たしかにびっくり仰天してしまうような話しで、日本人からはなかなか出てこないアグレッシブな発想だ。じゃあ、一つおもしろい例を挙げよう。それはEV1をつくたったGMの話だ。この会社には路面電車を殺した前科があるのだ。1920年代まではアメリカの都市は非常にコンパクトで、中心部も栄えていて、路面電車が沢山はしっていた。人口が30万人にも満たないこのロチェスターですら端から端まで、路面電車で行き来ができたのだ。しかし今では街は郊外郊外へと広がり、中心部は没落し、車が無ければろくに生活ができない。この辺は以前、「車社会が行き着いた先で考えたこと」で詳しく書いた。


1920年代のころの話だ、自動車が非常に人気になりGMはどんどん力をつけ、ますます事業を拡大していこうとしていた。GMは商売のじゃまになる路面電車の会社を片っ端から買収して、つぶしていったのだ。車のじゃまになる線路をはがし、架線を取り外し、路面電車をスクラップにしていった。そして路面電車はバスに置き換えられた。こうして公共交通機関が不便になり、ますます自動車が普及していった。「ファストフードが世界を食いつくす」で詳しく説明してあるので、ちょっと引用してみる。

<引用開始>
(自動車業界は)どんな手を使ってでも、(自分たちの商売のじゃまになる)鉄道を完膚無きまで打ちのめそうと心に決めていた。1920年代後半、GM社は多数のトンネル会社を利用して、密かにアメリカじゅうのトローリーシステム(路面電車システム)を買収し始めた。 〜中略〜 全部で100以上のトローリーシステムがGM社に買収をされたのち、徹底的に解体をされた。軌道がはぎ取られ、架線は取り壊された。トローリー会社はバス会社に姿を変えてしまい、新たに必要になったバスをGMが製造した。

やがてGMは、道路建設から利益を得るほかの会社を口説いて、莫大な費用がかかるトローリーシステムの買収を手伝わせはじめた。1947年、同社とその協力会社は、連邦独占禁止法違反で起訴される。二年後、シカゴにおける公判で、彼らの共謀の実態と、その裏に潜む意図が暴かれた。GM、マックトラック、(タイヤ会社の)ファイアストーン、(石油会社の)スタンダードオイル・カリフォルニア社の全てが、連邦陪審団により、二つの訴因のうちひとつについて有罪を宣告された。後日、調査報道記者ジョナサン・クイットニーは、
この事件は「公共政策の重要な問題を、政府が私企業の私利私欲に預けるとどうなるかという好例だ」と論じている。ウィリアム・J・キャンベル判事の怒りは、それほどまでには大きくなかったようだ。彼はGMその他の企業に、それぞれ5000ドルの罰金を支払うように命じた。アメリカのトローリーシステムの壊滅を密かに企てて実行に移した重役達は、おのおの1ドルの罰金を科された、そして戦後の自動車の天下は、それ以上たいした問題にぶつからずに続いた。
P25ー26 ファストフードが世界を食いつくす(Fast Food Nation) 著者エリック・シュローサー(Eric Schlosser)
<引用終了>

これと同じ事を今回も石油会社と組んでGMはまたやったのだ。アメリカにも談合はある、ただそれはほとんど陰謀だ。 つづく

その1誰が電気自動車を殺したのか?
その2談合はアメリカにもある。ただそれはほとんど陰謀

その3 アメリカの製造業の終わり

参考文書

電気自動車EV1の末路
http://www17.plala.or.jp/tokamori/jev1-0.htm

映画評論家の町山智浩さんもコラムの花道というネットラジオ放送で詳しく紹介している。
http://tbs954.cocolog-nifty.com/st/2006/07/718_bd8f.html (無料)

wikipedia General Motors EV1のページ
http://en.wikipedia.org/wiki/General_Motors_EV1

wikipedia 京都議定書のページ
http://ja.wikipedia.org/wiki/京都議定書


ファストフードが世界を食いつくす(Fast Food Nation) 著者エリック・シュローサー(Eric Schlosser)


2006年10月24日に追記しました。

このEV1が殺されるまでのあらすじはこうだ。カリフォルニア州のゼロ排気ガス規制(Zero-emissions vehicle Mandate)を受けて、自動車会社はことなる二つの方法で、この厳しい規制に対応しようとしたのだ。一つはEV1のような電気自動車を開発をしながら、この規制をなんとか乗り切ろうとした。

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投稿者 佐藤研一朗 : 2006年10月24日 05:52
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コメント

佐藤研一朗さま

お久しぶりでございます。粘り強くご活躍を続けておられることに敬服しております。
さて佐藤さまにメールにてご連絡を取りたいと思ったのですが、以前のメールアドレスが使えなくなっているようでした。差し支えなければ、ご連絡の取れますメールアドレスを、下記の私のアドレスまでお教え願えませんでしょうか。
お忙しいところ恐れ入ります。唐突なコメントで失礼いたします。不都合でしたら削除して下さい。よろしくお願い致します。

須藤様
激励ありがとうございます。
メールに返答をしました。
研一朗

投稿者 須藤よしなお : 2006年10月25日 16:26

日本人はイデオロギーや大義名分に踊らされるだけですからね。


結局、イデオロギーや名分という奴は所詮、駒たる市民を動かす為のえさに過ぎない。
重要なのはその奥にある権力や金、権威であるにも関わらず、価値判断は正義か悪かが全てになっている。

はっきり言って、政治というのは結果さえ良ければ、主義も手段もどうでも宜しい。
縦割り行政だろうが横割行政だろうが、国営でも民営でも独裁でも民主主義でも、暮らしが良くなれば何でも良い。
が、「民主主義」とか「縦割りの弊害」とか「民営の効率性」とか「国際貢献」とか、そういう大義名分だけ一人歩きして、それに踊らされる。
その裏の利権に気付かずに。

ま、「仕掛ける側」からすれば、これ程騙しやすい性向は無いんですけど、仕掛けられる側に居ながら騙されている他者の巻き添えというのは正直しんどいですよねえ。
だからって、「仕掛ける側」に回りたいとも思わないし(苦笑

投稿者 滑稽本 : 2006年12月15日 10:16

まあ、それはどこでも一緒でしょうね。このごろアメリカ人もイデオロギーや大義名分に踊らされまくってるでしょう。良くも悪くもイデオロギーや大義名分ってもの自体が、支配者層が大衆を踊らすものって性質がありますかね。

頑張って,win-winをちゃんと提案できるリーダーになることでしょかね。

コメントありがとうございました。

投稿者 佐藤研一朗 : 2006年12月16日 13:24
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