アメリカの製造業の終わり  近未来交通機関の現在3

2006年11月03日

アメリカの製造業の終わり  近未来交通機関の現在3

[投稿者:佐藤研一朗]

その1誰が電気自動車を殺したのか?
その2談合はアメリカにもある。ただそれはほとんど陰謀

仙台インターネットマガジンの読者の皆様、こんにちは、佐藤研一朗です。今日は近未来交通機関の現在の3回目です。前回はアメリカの自動車会社、石油会社、ブッシュ政権が談合して、電気自動車をつぶしてしまった話をしました。今回はどうしてGMが自分たちで作った電気自動車を殺したのかを考えていきます。

<前回からの引用>
1920年代のころの話だ、自動車が非常に人気になりGMはどんどん力をつけ、ますます事業を拡大していこうとしていた。GMは商売のじゃまになる路面電車の会社を片っ端から買収して、つぶしていったのだ。車のじゃまになる線路をはがし、架線を取り外し、路面電車をスクラップにしていった。そして路面電車はバスに置き換えられた。こうして公共交通機関が不便になり、ますます自動車が普及していった。
<略>
これと同じ事を今回も石油会社と組んでGMはまたやったのだ。しかしまだ謎は残る、今回殺したのは、自動車会社の敵だった路面電車でなく、自分自身で作り上げた電気自動車だった。どうしてGMはそんなことをしたんだろうか?
<引用終了>

疑問は、商売敵をつぶすのではなくて、自分自身が開発した技術をつぶして、GMはなにか得したのか? 電気自動車が普及するとなにか損をするのか?ということだ。

ポイントは、電気自動車の非常にシンプルな構造で、今ガソリン車で使っている60%くらいの部品が不必要になることだ。エンジンがないので、エンジンに燃料を送るインジェクション、エンジンの動力を伝えるトランスミッション、ガソリンタンク、排気パイプなどかいらない。バッテリーとモーターだけでこれらの部品をすべて置き換えてしまうのだ。

その上、電気自動車は減速をするときモーターを使い、受電するので、ブレーキパットの減りもすくなくてすむ。消耗品である、エンジンオイル、エアフィルター、プラグもいらなくなる。つまり、メンテナンスにお金がかからず、消費者にとっては経済的なのだ。

しかし、電気自動車が爆発的に普及すると、このような部品や消耗品の生産や、車の修理などをしている自動車会社の関連会社、下請け会社がばたばたつぶれる可能性が高い。自動車会社はそれを恐れているのだ。

しかし、将来、そんな危険があったとしても、1000億円もかけて開発した車を、どうしてそんなに簡単にやめてしまえたのか? もとを取ろうとしなかったのは、なぜだ? 実は、この開発費はクリントン政権の特別プロジェクト(Partnership for a New Generation of Vehicles)助成金1250億円から出ていたのだ。だから、GMとしては、EV1の開発をやめても、自分のお金を使っていないので、自分の腹はいたまなかったのだ。

GMは超クリーンなEV1をやめたあと、全く反対の路線へ進んでいく。ハマーという戦車のような大きい車を作っている会社を買収した。そしてSUVを売り出し大変な人気になった。タフでマッチョなアメリカ人の男なら、SUVに乗ろうみたいな感じで売り込んでいたのだ。この歩行者をひいてしまいそうな、むだにでかい車は、もちろん燃費も悪いし、街を走るようには作られていない。しかし車体が大きいので値段が高く、利益率が非常によかったそうだ。

SUV人気でうはうは言っていたのもつかの間、ここ数年の原油高騰により、燃費の悪いSUVは一気に売れなくなっていた。アメリカの都市は郊外化していてだだっ広く、結構な距離を多くの人が車で毎日通勤している。だから、ガソリンの値段が上がると、家計に直撃するのだ。日本のように電車やバスが発達していない上に、公共交通には貧乏人が乗るものだという偏見があるのに、簡単に車通勤をやめるわけにも行かないのだ。

今回はガソリンが二年前の二倍くらいになったので、自然と燃費のいい日本車や韓国車が人気になっていった。とくにハイブリッド車は火がついたように販売台数を伸ばしいている。トヨタのプリウスは順番を待たないと買えないくらいだ。

今回の原油価格高騰で、日本の自動車会社は、環境に優しいというブランドを完全に確立しように見える。もうだれも、日本車が売れすぎて、GMの車が売れないと文句をいうアメリカ人はいない。GMの車が燃費が悪いことをよく知っているからだ。

GMは、EV1をつづけていれば、環境意識が高まる今、環境リーダーとして業界を引っ張っていけたかもしれない。まったくGMが失ったもの大きい。ビックビジネスチャンスだけでなくて、社会的な信用である。環境に責任を持とうとしていないと烙印を押されたのだ。これは致命的である。

短期的な利益だけを考えて、環境問題を気にせず、電気自動車を殺し、燃費のわるいSUVを大量に売り込んだGMは、結局、SUV戦略でずっこけて、業績不振に陥り、今にもつぶれそうな気配だ。日産に買収を打診されるなど、ひどい落ちぶれ模様だ。「GMにとっていいことは、アメリカにとっていいことだ。」といわれていた時代はもうもどってこないだろう。

自分たちで作った技術を自分たちでつぶしまう、親の子殺しみたいなことをやったのだから自業自得である。それにしたって悲しい話だ。自分たちがもっているいい技術も売っていけない、まさに、アメリカの製造業の終わりを象徴しているそんな話である。

参考文書
Who killed the electric car? のプレスキッド
http://www.sonyclassics.com/whokilledtheelectriccar

「スーパー電気自動車」が温暖化を防ぎ、日本経済を救う 船瀬俊介
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/d/02/

Silicon Valley NOW 夏来 潤
http://www.intellisync.co.jp/svnow/svnow20060629.html


その1誰が電気自動車を殺したのか?
その2談合はアメリカにもある。ただそれはほとんど陰謀

その4水素社会・燃料電池の大きな嘘


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投稿者 佐藤研一朗 : 2006年11月03日 04:57
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