水素社会・燃料電池の大きな嘘 近未来交通機関の現在4
水素社会・燃料電池の大きな嘘 近未来交通機関の現在4
[投稿者:佐藤研一朗]
その1誰が電気自動車を殺したのか?
その2談合はアメリカにもある。ただそれはほとんど陰謀
その3アメリカの製造業の終わり
世界中の仙台インターネットマガジン読者の皆様、お元気でしょうか? 佐藤研一朗です。ロチェスターではついに雪がちらつく季節になってきました。今年の冬ごもり用に、先日レコードプレーヤーを買い込みました。この冬は音楽三昧です。さて、今日は近未来交通機関の現在の第4回目です。水素を使って走る燃料電池車が、将来の車の主流になると言われているけれど、どうもこれは大嘘だということを書いていきたいと思います。
ブッシュが好きな燃料電池
Who Killed the Electric Car?を見ていて、わかったことは「将来、燃料電池が車に搭載されることは無い、必要性がほとんどない。」ということです。インフラ整備、効率などの面でどうしてもバッテリーをつんだ電気自動車にかなわないからです。
燃料電池は、水素から電気を発電するシステムです。電池と言うより、水素発電機と考えるとわかりやすいかもしれません。水素から電気を起こすときに出るのは水だけなので、非常に環境によいとされています。多くの自動車会社が燃料電池を積んだ燃料電池車を開発中で、電気自動車のEV1をつぶしたGMは、将来、燃料電池車が車のスタンダードになると息巻いています。
ブッシュ政権はこの燃料電池を非常に気に入っているようで、ブッシュ大統領は2003年1月28日一般教書の演説で、12億ドルの研究費を計上し、アメリカがクリーンな水素燃料自動車の開発で世界をリードすると宣言している。(1)そんなこともあって、日本でも官民あげて燃料電池の研究開発に明け暮れている。けれど、よく見ていくと、普及にはどうにもならないような大きな問題がある。
インフラ整備?
まず、一番大きい問題は、水素をその辺のガソリンスタンドで車に充填できるようにするためのインフラ整備に、莫大なお金がかかることだ。現在ガソリンスタンドで済んでいるのに、ろくに走っていない燃料電池車のために、巨額なお金がかかるインフラ整備を、石油会社がするだろうか? 水素を充填できるスタンドがなければ燃料電池車は、ただの箱である。水素はそのままの形で自然界に存在しない。だから、結局、水素を生成するのに石油や天然ガスから水素を生成する必要がある。水素は資源(Energy Source)ではない、ただのエネルギー運ぶための媒体(Energy transport medium)でしかない。これは繰り返し指摘されるべき重要なポイントだ。
水素を生成するときの効率の問題もあし、この手の施設を作るのにもお金がかかる。それとスタンドにいって燃料を補給するというパラダイムは変わらないので、石油会社にとって非常に都合がいい。自然エネルギーを使って、水を電気分解して水素を作るという話もあるが、その自然エネルギーで発電して、電気を電線で送ってしまった方が、よっぽど効率がいい。
それと、水素は非常に不安定な物質だ。この危険物を高速で移動する車に搭載するのに向いているかは疑問だ。ガソリンよりも危険であるのは間違いない。だいぶ、開発が進んだといっても、現在燃料電池車は一台1億円くらいするのだ。とてもでは無いが、実用に近いという段階ではない。500万円だった電気自動車が売れなかったのに、水素を充填するスタンドもないまま、1億円の燃料電池車を普及させるというのは、ほとんど夢だろう。
燃料電池車は、一種の電気自動車で、燃料電池をつかって発電して、バッテリーを充電して、モーターを回す仕組みだ。つまり簡単にいうと燃料電池車は、バッテリー電気自動車に、水素タンクと燃料電池を、余計に積んだ乗り物だと思ってもらうといい。たかがバッテリーを受電するために、9500万円する余計な機材を積んだり、水素のインフラ整備に何兆円もかけるなら、コンセントから充電できるバッテリー電気自動車のほうが、断然にいい。
だいたい、電気自動車のためのインフラ整備はほとんどいらない。家庭の駐車場に延長コードを引けば、明日からでも電気自動車を動かすことができる。電気は、すでにどこまでも来ているので、充電スタンドをつるのは簡単である。これをスーパー、コンビニ、レストランなどの駐車場に設置すれば、用事を済ます間に充電できるので、ガソリンスタンドよりも便利になるだろう。インフラ整備の観点から言って、燃料電池車がもっている利点はほとんど無いといっていい。
エネルギー効率?
そして決定的なのは、エネルギー効率である。下の図を見てほしいのだが、燃料採掘するところから車の車輪までエネルギー効率を見ると、燃料電池車は電気自動車の約半分の効率しかないのだ。電気自動車が27%、燃料電池車が15%である。ガソリン車の7%の効率には勝つが、はっきり言ってすでに勝負がついている。
2006年3月に、経済産業省が中心になって進めている水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC)の、成果を発表する「JHFCセミナー」で、「総合効率」の発表が世界で初めて行われた。ここで将来の燃料電池車でも、現在の電気自動車の効率にかなわないということが発表された。 「総合効率」とは、“Well to Wheel”(油井からホイールまで)と呼ばれる指数で、自動車が1kmあたり走行するにあたって消費するエネルギーの効率(いわゆる燃費)と二酸化炭素排出量を、燃料の原料採掘から消費まで一貫して計算したものである。(3)笑えるのは、現在の燃料電池車の効率は、電気自動車どころか、ディーゼルハイブリット車の効率にも劣るのだ。これでもどうにもならない。どう合理的に考えても燃料電池を車に積む必然性は見えてこない。
(3)やめられない、でも先が見えない燃料電池車と水素社会より
白旗を揚げた経済産業省
JHFCセミナー2006を取材した記事「やめられない、でも先が見えない燃料電池車と水素社会http://www.jafmate.co.jp/mate-a/cvnews/report/rep200603fcev.html
をよむと関係者の嘆きが聞こえてくるようだ。完全に白旗を振っている。燃料電池を押していた経済産業省は、これを受けてだろう、どうも方向を転換して、バッテリーの開発に力をいれ、電気自動車を推し進めていくことになったようである。(5)非常にただしい方向転換だと言えるだろう。
<FujiSankei Business i. 2006/9/4 引用開始>
経産省、電池改良で電気自動車普及へ
経済産業省はこのほど、電気自動車(EV)の普及に向け動力源となる自動車用電池の研究開発を産学官連携で開始する方針を明らかにした。
2007年度から5年間でリチウムイオン電池の低コスト、高性能化を実現。燃費などを含めたトータルコストを従来のガソリン自動車と同等レベルにすることを目指す。
EVはガソリンの消費量や排ガスの抑制につながるため、次世代自動車として注目を集めている。しかし、電池部分のコストが高く、普及に向けた大きな課題となっている。
研究開発は、独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を中心に推進する。
このため07年度予算の概算要求に50億円を盛り込んだ。今後、大学や自動車メーカー、電池メーカー、電力会社などと連携して取り組む。
ガソリン車並みの性能とコスト実現に向け、目標を3段階に分けて設定。10年をめどに電池コストを半分に下げることで、既に市場に投入されている1回の充電で80キロ程度走行できるEVの普及を実現させる。
15年には電池性能を1・5倍、コストを7分の1に削減して、軽自動車の代替となる1回の充電で150キロ程度走行できるEVを開発する。
さらに、30年には電池性能を7倍、コストを40分の1にして、本格的なガソリン自動車の代替車開発を目指す。これと併せて、電池の安全性整備や、充電スタンドを普及させるための体制づくりなどにも着手する方針だ。
<引用終了>
(4)
目くらまし
そうすると燃料電池を車に積もうというのは、結局、石油会社、自動車会社による目くらましだったのではないか? 考えてもほしい電気自動車は石油会社の天敵だ。何たって石油を必要としないのだから、これが普及したら商売は成り立たない。つまり、石油会社としては、電気自動車ではなくて、水素を使う燃料電池車がはやってほしいのだ。燃料電池車がもし遠い将来普及すれば、今までのように水素をスタンドで販売することができ、ビジネスを続けることができる。それに、当分燃料電池車が普及することはないので、需要がないと言ってインフラ整備をする必要が当分ない。
自動車会社としては(とくにGMは)燃料電池車を開発していますよと言って、環境問題に取り組んでいるようなポーズができる。だけど、当分は実用になることはないので、その間、今までのように普通のガソリン車を売り続けることができる。
この辺の思惑が一致して、石油産業に近いブッシュ政権とつるんで、決めたのだろう。水素社会を推し進めるといって、研究費をばらまけば、研究者ものせられてしまい、多くの研究者が研究を始め、次の時代は水素・燃料電池だということになる。アメリカが国を挙げて研究しているとなれば、ほかの国々も乗り遅れるなということになる。大衆も疑いもなしにそれを信じる。こうして世界中がだまされたのだ。
燃料電池の技術が自体が悪いわけではない。何度も言うけれど、ただ、車に乗せる技術ではないし、その必然性が無いということだ。効率があがってくれば、燃料電池を家庭において、都市ガスから電気を起こすのは悪いアイディアではないし(6)、大規模発電の効率のあげるための技術としては、将来性はありそうだ。(7)しかし自動車については、いづれにしてもコンセントから電気自動車に充電をするのが、一番シンプルで、効率がいいのだ。
それにしても石油会社にしても、アメリカの自動車会社にしても、なんとか、今のビジネスを現状維持することしか考えていない。燃料電池車のはなしは、かなり陰謀臭い話だが、今回の陰謀は、自分たちのビジネスを拡大するために路面電車を殺したときに比べると、レベルが低い。完全に守りにはいっている。この辺に、時代の移り変わりを感じる。
昭和天皇は「日米戦争は油で始まり油で終つた様なものだ。」と言ったそうだが、まさに、20世紀は石油の時代だった。自動車という便利で世界中で需要があるものが、ガソリンだけでしか動かないから、石油が重要で、これを独占した物が常に、経済、政治の力を握ってきた。世界中が石油に振り回された時代だった。そしてその勝者がアメリカであった。しかし、その時代がもうすぐ終わりを迎える。
電気自動車の普及は、石油の時代の構造を根底から覆す物だ。ここに、ビックビジネスチャンスがあるし、世界の政治システムを変えるだろう。これを政治家だけでなくて、世界中に車をうることで生計を立てている日本国民はよく知っておくべきだ。それが今後の日本の運命を左右すると言って、大げさではないだろう。
電気自動車の普及は、もう一歩前まで来ている。いくら妨害があっても、日々技術は進歩し、後ろには戻らない。これが普及した時に、石油時代が終わりる。我々はいま時代の大きな転換期にいるのだ。なんとも感慨深い。
なんとも興味深いのだが、その石油の時代に息の根を止めるのは、日本に与えられた役目のようなのである。
つづく
参考資料
(1)原子力百科事典
http://sta-atm.jst.go.jp:8080/14040132_1.html
(2)地球温暖化解決のための電気自動車 清水浩
http://www.prime-intl.co.jp/gosat2006/files/Shimizu.pdf
(3)
クリーンビークルニューズ
JHFCセミナー2006レポート やめられない、でも先が見えない燃料電池車と水素社会
http://www.jafmate.co.jp/mate-a/cvnews/report/rep200603fcev.html
(4)
フジサンケイビジネス
経産省、電池改良で電気自動車普及へ
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200609040022a.nwc
(5)経済産業省
次世代自動車用電池の将来に向けた提言
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g60824b01j.pdf
船瀬俊介
高性能EVの市販競争はすでに始まっている
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/d/05/03.html
(6)東京ガス・ライフエル
http://home.tokyo-gas.co.jp/lifuel/index.html
(7)浜田基彦の走る 曲がる 止まる
燃料電池車危うし、ただし巨大燃料電池が実現すれば
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20060323/100666/
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なるほどと考えさせられます。最近、お台場でBMWのハイドロジェン7を見てきましたが水素燃料タンクがほんとに安全なのか、やはり不安でした。、戦後、立川飛行機が興した「東京電気自動車」が製作した(たま電気自動車)があり、1回の充電で200㎞ものポテンシャルをもちながら今まで世に出てこなかったのも不思議です。不安材料は他にもあります。ガソリンエンジンが不要になると、自動車産業の産業構造そのものが変わってしまい、多くの下請け企業が倒産するのではないかなぁ、という不安です。
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